漆とは、漆の木を傷つけると出てくる樹液の事で様々な加工をすることにより塗料としてや接着剤としても使用する事のできる非常に万能なものです。金継ぎも最終的な加飾を含めてすべての工程で漆をつかっていきます。
日本をはじめとする東アジアに生える漆ですが日本や中国のものはウルシオールが主成分で、タイやミャンマーの漆はチチオールが主成分、、そういった具合に漆と言っても色んなものが存在します、日本で漆と言われるものはウルシオールが主成分のものになっていて20世紀に真島利行先生、三山喜三郎先生によって構造決定、命名されました。
ちなみに山で肌がカブれた場合はほとんどの場合がツタウルシが原因なんですが、これも漆と言いつつラッコールという全く違う成分です、天皇の色として有名な黄櫨染(こうろぜん)も別名漆染めといいますが、*ウルシ科の櫨(ハゼ)からとっています。
採取方法も変わっていて、日本は殺し掻きという手法をつかって初夏から夏の終わりにかけて特殊な鎌で木に少しずつ並行に傷をつけ漆を絞りとります。
初辺→(はつへん、夏のはじめに取れる水分の多い漆)、
盛辺→(さかりへん、夏の盛に取れるウルシオールが多い漆)、
末辺→(すえへん、夏の終わりに取れるモタっとした漆)
に分けて保存します。
その他に辺漆を採りつくしたあとに*裏目漆(うらめ)や*枝漆などの特殊な漆を採取する方法もありますが手間の割に採れる量が少ない為か、採取できる人が減ってしまっている状態です。
漆の木自体が勝手に自生するわけではない為管理する人が必要になったり、
採取する季節が限られる為、他の季節には農業や別の仕事をする掻き子さんがほとんどだったりします。
漆の若芽は動物にはご馳走らしく毎年鹿に食べられる獣害が問題になったりします。
春になると漆の新芽の天麩羅を食べる漆関係者が増えてきます。植林するにももただ植えるだけでなく色んな課題があるんです。
1シーズンでたくさんの漆がとれますが木が死んでしまいますので、色んな所に木を埋めて育て循環しながら採っていくスタイルになっていきます。
中国の場合、養生掻きという手法でv字状の切り傷を入れて下に大きい二枚貝を斜めに突き刺し貝に溜まった漆を採取する方法です、一回で漆を取り切らないので1シーズンに取れる漆は少ないですが木は成長を続けるので中国の漆の木はとても大きいです。
デメリットとしては雨が降ったら雨水が入ってしまう、ゴミが入りやすい事などです。
日本のように採った漆を細分化しませんが、中国の場合は産地によって特徴が結構違います、土地が広大なので多種多彩な土壌があるのが原因なんでしょうか?
城口が平均的で多く流通していて、毛惧(もうぽ)はウルシオールが多い、畢節(ひっせつ)は鉄分が多くて粘りが強く黒っぽいなどです。
しかし漆屋さんではブレンドしてあるものがほとんどです。探せば別々に売ってくれたりもくれますが。
漆の良い漆というのは箆で持ち上げたときにスーッと垂れて途切れない漆でポタポタするものはあまり良くないといいます。
現在、日本に流通しているものの九割以上が中国産という現状であり日本産は僅か3%というデータもあります、現時点では中国国内での需要は低いようですが政府主体で国内でも漆器の需要を増やそうとしているという話があるなどの危機的な業界です。
しかしながら有識者や協賛者が徐々に増えはじめ、漆の植林や科学分析によって漆の出が良い種を特定しクローン化するなど(一本から大体200ccと言われている中400cc出す強者もいるみたいです。)若干明るいニュースもある今後に期待を抱きたい現状ですね。